――――カントリーコネクションはここ那須高原にある「素泊まりの宿」ですが、そもそもなぜ宿の宣伝をブログでやることになったのでしょう? その経緯、動機をお聞かせください。
カントリーコネクションのオープン前は、もちろん宿の公式ホームページ開設を考えていました。正直にいうと、この段階ではブログという存在をまったく知らなかったんです。自分でホームページビルダー使ってつくればいいや、ぐらいに考えていましたから。
ところが、いざ開業直前になると、消防署や保健所の検査が入ったりして、とてもじゃないけどホームページを自力でつくっている余裕がなかったんですね。そんな折、うちの犬たちがお世話になっている動物病院の先生が、「よかったら俺の知り合いを紹介しますよ」ってことで、増田真樹(http://www.metamix.com/)さん【註】と出会ったんです。
さっそく増田さんに一度ここに来てもらって、カントリーコネクションをどういう思想で運営したいのかを伝え、どういう形でインターネットでプロモーションすればいいのかを話し合いました。最終的にはサイトをブログにすることになり、設置は増田さんにすべてお任せしました。
――初めてブログの説明を聞いたとき、どういう印象をもたれましたか?
やっぱり、まずは更新の手軽さですね。宿ブログとして、とにかく新規のお客さんにもリピーターのお客さんにも、こちらから積極的に情報を発信したかった。通常のホームページの場合は、外観や部屋の写真を一度撮影して、出来上がりのものを見せるという形じゃないですか。でも、ブログは自ら情報をどんどん更新できるので、実際に始めてみると、何か生き物のようだな、と思っています。
――更新作業は、オーナー自らがやっているんですか?
奥さんと半々ぐらいでしょうか。私は出稼ぎというか本業というか、外でビル管理の仕事をしているので、そういう日は昼間に更新してくれています。このブログを立ち上げる際、増田さんが一番重要だと私に言ったのが、「毎日更新できるのか?」でした。長い文章を書いたり、写真をいっぱい入れなくてもいいならできそうだな、と。
記事の内容は、カントリーコネクションの"いま"です。「雪が積もっています」「今朝の気温は何度でした」など、お客さんにこちらの様子がわかるような情報をアップしています。あと、一度でも来てくださったお客さんに対しては、いまカントリーコネクションが何をしているのか、日々の暮らしぶりを伝えるような記事を書いています。毎日続けるというのは、そこに大きな意味があると思うんですよ。遠くに暮らす友人の日記を読むような感覚で見てもらえるよう、5行ぐらいの短い文章にして読みやすさを意識して書いています。
――実際にカントリーコネクションのブログを運営して、その効果はありましたか?
それはもう、非常にありました。びっくりするぐらいです。宿をオープンさせた当初は、親戚とか友だちがちょっと泊まりに来てくれた程度で泣かず飛ばず状態。ところが、ブログをスタートさせた途端、問い合わせの数がグッと増えました。ちょうど夏休み時期というのもあったんでしょうけど、「ブログを読んで親近感が沸いたから来てみた」というお客さんが大勢いらっしゃったんです。
ブログでは自分たちの顔を出していないのですが、それが逆にいろいろと想像させられるらしくて、文章とちょっとした写真だけでこの宿の雰囲気を読み取るしかないんですよね。その後、夏休みが終わっても、ブログの効果は持続しています。9~11月もコンスタントに宿泊客がいるので、周りのペンションのオーナーたちにも、「何でこの時期に客が入るんだ?」って言われました。2月なんかも、那須のペンションは宿泊客が少ない閑散期なのですが、うちは今年だけでもすでに延べ70人以上のお客さんが来てくれました(2月12日現在)。
――それは、ブログによる宣伝効果もありつつ、カントリーコネクションが一般的なペンションではないこととも関係しているのでしょうか?
そうですね。もともと私は若い頃あちこちを旅していて、行く先々でいろんな人にお世話になりました。その恩返しというか、旅人を支援する宿を開きたいと思って始めたのが、「カントリーコネクション」なんです。この宿は基本的に素泊まりで、食べ物や飲み物の持ち込みは自由。「旅の醍醐味は人との出会いである」という大義名分があって、旅人がつながる場所であってほしいんです。
あと、うちの特徴としてはリピート率がとても高く、宿泊客の4割以上はリピーターです。こうなると、「お越しいただく」というより「また帰ってきてもらう」という感じに近いですね。そういう宿をやっているので、私たちの運営方針がブログを通じて少しずつお客さんに伝わっていけばいいな、と思っています。
――ちなみにいま、ブログ以外に何か宣伝手段を使っていますか?
いえ、100%ブログだけです。ペンションでは通常、有名な旅行雑誌に掲載を依頼するのですが、これがだいたい1ページ60~70万円ぐらい。これを4誌ほど出して、旅行サイトにも情報を掲載します。また、仲介業者にマージンを払って旅行会社に紹介してもらうよう依頼したり、パンフレットを作ったり......と、何だかんだで一般的なペンションの場合、年間で600万円ぐらいの宣伝費を使うそうです。でも、うちはブログだけだから、多く見積もっても10万円以下(笑)。
――ブログのアクセス数はどれぐらいありますか?
ブログをはじめてしばらくは1日80件ぐらいでしたが、いまこの時期(宿泊客の少ない2月)は平均すると1日160~170件ぐらいでしょうか。夏休みはだいたい300件を超えましたし、ピーク時には500件ぐらいありました。やっぱり、連休にお客さんがドドンと入って来ると、そのあとに少しアクセス数が増えるんです。おそらく、泊まってくださったお客さんがブログをのぞいてくれているのでしょう。
といっても、やっぱり検索エンジンからのアクセスが多いですね。キーワードはそのまま「カントリーコネクション」とか、「那須」「素泊まり」「格安」、あとは「犬連れ」ですかね。ブログを始めた頃は、SEOを意識してこれらのキーワードを記事に入れていました。増田さんとは、「アクセスに対して1%の人が実際にお客さんになってくれればいいんじゃないかな」という話をしていたのですが、いまのところ1日1件は予約か問い合わせが来るので、暇な時期にしてはかなり良い成績だと思います。
――コメントやトラックバックはどのぐらい届きますか?
それがですね、ほとんどないんです。お礼のメッセージをメールでよくいただくことが多くて、何でだろ?と思っていたら、「ホームページに掲示板がないので、メールで送りました」ってそのメールに書いてあったりする(笑)。すでに自分のブログをもっているお客さんは、宿泊した日にコメントを残してくれますが、一般の方はまだブログの使い方というか、コメントをどこに書いていいのか、あるいはコメントが何なのか、それもよくわからないんじゃないでしょうか。
――せっかく旅人同士が交流できる宿のブログなので、欲を言えば、宿泊同士がブログ上で交流できる仕組みがあると良いと思うのですが。
そうなんですよ。ブログのコメントやトラックバックは、有効なコミュニケーション機能として期待していたのですが、残念ながら現状ではうまく動いていません。これは今後の課題というか、何とかしたいテーマですね。あと、コメントスパム対策もしないと、せっかくいただいたコメントが埋もれてしまって見逃す危険性もありますし......。
ただ一般的に、宿経営の結果は3年後に出るといわれています。ですから、いまコメントが少ない件については、楽観はしていないけれども悲観はしていません。このまま毎日更新を続けてログが貯まっていけば、3年後にカントリーコネクションがどういう場所なのか、それを説明できるブログが完成するんじゃないでしょうか。ブログをはじめたからといって、いきなり完全な結果は出ませんよね。ブログは毎日少しずつ成長していくものだと私は思っています。
【註】増田真樹さん:フリージャーナリスト・コンサルタント。[METAMiX3.0!]主宰。著書「超簡単! ブログ入門」(角川書店)は、大手書店などで新書ベストセラー入りを果たした。
取材/文:宮脇 淳(ノオト)
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