去る9月30日にオープンした「TIIDA BLOG」。TIIDAの魅力を等身大の視線で読者に届けるこのblogは、購買顧客層に対して有効なマーケティング・ツールとなり得るのか? スタートから1ヵ月半、TIIDA BLOGの担当者にblog開設から現在に至るまでの経緯、さらにはblogをビジネスで活用することの手ごたえなど、さまざまな視点でお話を聞かせていただきました。
[日産:TIIDA BLOG http://blog.nissan.co.jp/TIIDA/]
――まず、なぜ自動車のプロモーションをブログにしたのですか? その経緯を教えてください。
自動車だからという正当性のある理由はなくて、1つの大きな理由に「TIIDAだったから」というのがあります。TIIDAのプロモーションは、ヤフーとのタイアップでスタートしたウェブドラマ「DUAL FEEL」がまずあって、これをきっかけにTIIDAを知ったという人が多かったんです。そこで、ウェブのアクティブ・ユーザーとコミュニケーションするに当たり、ブログに可能性があるんじゃかということになりました。
もう1つは、この下期に6車種を一気にリリースするということになり、通常のメールマガジンで大量に情報を配信しても、受け手側のメールログの中に埋もれてしまうことが考えられました。そもそもほかの車種の場合は、その車の世界観を語るような"スペシャルサイト"を立ち上げるのですが、TIIDAにはそれ自体がなかったんです。こういった経緯・状況のなか、まったく新しい切り口を探して最終的にブログに行き着きました。
つまり、TIIDA BLOGは「メールマーケティングでやっていること」「スペシャルサイトでやっていること」を代替する新しいサイトとしてスタートしたわけです。まったくTIIDAを知らない人にはその存在を知ってもらう、すでに名前を知っている方には実際にお店に行って見もらう。このように、TIIDA BLOGには"購入プロセスを一歩進める情報を提供する"という目的がありました。
――自動車の販売促進を目的としたブログは、国内では前例がなかったと思います。ブログの立ち上げの際に参考にしたブログ、モデルケースはありますか?
まず、社内でこの企画を出したときは、ブログがどういうものかという話から始めました(苦笑)。もちろん、自分の個人ブログを出すわけにはいかなかったので、ある日本の映画のブログを見せたんです。この中には監督が描いた絵コンテが掲載されていて、普通ならウェブに載せられないようなものを時系列で見せているんですよ。これでイメージを膨らませました。公開前までにどれだけ盛り上げるのかが勝負ですから、ブログと映画宣伝は相性がいいと思うんですよね。
基本的な考えとして、ブログを企業としてどう使うかよりも、逆にいままでメールやウェブでやってきた販促の方法論をブログに移行したとき、それまでの何をどう変えていくのか?と考えたほうがわかりやすいかもしれません。ブログの魅力って、人の日常を垣間見ているような生々しさだと思うんですよ。インタラクティビリティやCMSの手軽さも上げられますが、TIIDA BLOGの場合は「山本」という一社員の語り口で続けることが大切なんですね。
逆にやっちゃいけないのは、話題が車から離れてしまうこと。だから、あえてコメント欄を外しています。企業が運営するブログのコメントは、スレッド化しやすい。その理由は、山本が言っていることは個人の語り口であっても、やはりメーカー側の言い分に過ぎないからです。一方、トラックバックによって入ってくる一般ユーザーの声は、TIIDA BLOGの周囲をぐるっとかぶせるように包んで、ネット上に広がっていくような状態だと思います。つまり、山本の視点じゃない情報をトラックバック先のブログが補っている、と。もちろん、なかにはほかの車との比較や辛らつな意見もありますが、それもひっくるめてTIIDA BLOGですから。
――トラックバックから消費者の何が見えてきますか? トラックバック先の記事を販売戦略に応用しよう、役立てようという考えはありますか?
トラックバックの数は予想以上ですし、その質も想像以上に高く、いろんな面白い意見もあって勉強になります。社内でもみんなが「面白いね」と言ってくれているので、ブログを運営してとてもよかったと思います。この反応は、開発者側が主張したいセールスポイントをブログでちゃんとアピールできているってことだと思うんですよ。それに対してトラックバックがついてくる。この仕組み自体が新鮮で、反応のスピードが速いことにも驚かされました。
ただ、裏を返すと、読み手の反応のスピードが速いので、こちらの制作フローもスピードが必要です。実は、そろそろTIIDAが1万台受注を突破しそうな時期に合わせて予定稿を用意していたのですが、「Response」で先に情報が出ちゃって、こちらが記事をアップする前にそれを見たブロガーが「1万台突破!」ってトラックバックを打ってきて......(苦笑)。通常、インタビュー取材以外のエントリーは、原稿・画像の確認も含めて2~3日、速報性が求められる記事は1日ぐらいのフローでアップするのですが、このときばかりはほんの数時間で公開しました(笑)。
――それは大事件でしたね(笑)。外から見てもTIIDA BLOGは十分成功していると思うのですが、なぜ2ヵ月限定なんですか?
1つの商品のブログを企業がずっと続けていくのは限界があると思っています。個人の生活の営みは連続性があるので、ブログ="日記"として続けていけるでしょう。しかし、車の場合はある一定期間内に情報をリリースするわけですが、車そのものが成長したり変化するわけじゃなく、出せる情報は最初から決まっている。販売イベントでも立ち上げ時期に集中しているので、そこから先にまで継続的に提供していけるだけの情報を持ち得ないんです。
......といいつつ、実際に1ヵ月半ほど運営した現時点では、予想以上にネタがありました(苦笑)。ブログの場合、途中で突発的に何かあったときに情報を手軽にアップできますからね。たとえば、「サボテン・ジャーニー」や「ティーダ&ラティオ『くつろぎ実感』キャンペーン」は、最初の企画段階ではなかったものでした。この影響で、いまだに掲載できていないインタビュー記事がストックされている状態です。当初、10月は週3ペース、11月は週2ペースのはずだったんですけどね。予想以上にシナリオどおりに行かない部分が出てきました。社内からも継続要望が出てきていますので、ただいま若干の期間延長も検討中です。
――なるほど。そういった経緯を振り返って、ブログがビジネスに使えるという感触は得ましたか?
ネタとかタイミングによっては、今後も十分にやれると思います。ただ、いまだからこれだけの反響があるんだとも思っています。"新しさ"という話題性だけでやるのは、ここから先はつらくなるでしょうね。トラックバック先の1つに、「わざわざドメインを"blog.nissan.co.jp"にしているからには、これから全車種でブログをやるのか?」なんて記事がありましたが、それはない(笑)。
もちろん、車のブランドイメージの問題もありますが、実際にブログを運営して思ったのは、想像以上に更新がつらいですね......。更新頻度を高く設定すると、やはりそれなりの工数がかかるんです。もちろん、普通にウェブを構築するのに比べれば、デザイン作業、ライティング、コーディングなどは楽ですが。あとは、いまアクセス解析ぐらいしかデータといえるものが取れていなくて、そこから先のユーザーが動きなどがまだ把握できていないんです。今後はそういった部分をもっと分析していきたいですね。
もし今後、何らかの形でブログをやるなら、やはり何かキャラクターを立てることも考えるべきかな、と思います。"山本"ではなくて(笑)。日産はあまりキャラクターを押し出す会社ではないのですが、たとえばカルロス・ゴーン社長がブログで自社の車を紹介すれば、英語の勉強も兼ねていろんな人が見てくれるかもしれませんね。あとは、販売促進などのキャンペーンでブログを利用することは考えられるかもしれません。実は、具体的な構想が頭の中に浮かんだりしているのですが......それはまた次の機会ということでご勘弁ください(苦笑)。
取材/文:宮脇 淳(ノオト)
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